当店は、2017年7月に亡くなられた江戸小紋師 藍田正雄さんと20年以上に渡り、お付き合いをさせて頂きました。
それまで藍田さんの作品は、百貨店での取り扱いがほとんどで、専門店で取り扱っているお店はほとんどありませんでした。
藍田さんの江戸小紋への情熱と、常に新しい技術を追求する姿勢はにほれ込み、取引をお願いしました。それから、毎年少しずつ作品を分けて頂いていました。
藍田正雄さんが亡くなられた後は、後継者の藍田愛郎さんに作品の制作をお願いしています。
現在も、藍田正雄さんの作品が店舗にございます。気になる方は、ご来店時にお尋ねください。
また、定期的に工房を訪問して、色や柄を打ち合わせしながら染めて頂いています。
こちらは当店の創業60周年に当たって、タペストリーを30枚染めて頂いた時の様子です。
この時は、後継者の愛郎さんとともに、当店にご来店頂きました。
藍田正雄さんに染めたもらったタペストリーを一緒に見ています。
こちらは藍田正雄さんと後継者の藍田愛郎さんと当店店主。
こちらは2016年の8月に、息子と高崎の工房を訪問した際の写真です。
普段は見れない、たくさんの型紙を見れるので、藍田さんの意見を聞きながら染をお願いできます。
その際に、『江戸小紋をカジュアルな感覚でも着られる様にしたい』という事で、藍田さんと色と型紙を相談しながら染めた一枚です。『破れ菱格子に花』という、昭和初期の型紙を使用しました。
地色を明るい水色にしたので、大き目の柄を選んで柄がぼやけないように工夫しました。
過去に染めていただいた藍田さんの作品の一部です。
画像をクリックすると詳細をご覧いただけますので、ぜひご覧ください。
1940年 群馬県生まれ
1983年 日本工芸会正会員
1999年 群馬県指定重要無形文化財保持者 指定
1940年 群馬県で江戸小紋師 藍田春吉の元に生まれ、中学卒業と同時に江戸小紋師としての修行の道を歩み始めます。
決まった工房を持たない『渡り職人』として幾人もの親方・職人の下で技術を磨き、30才で群馬県での工房を構えます。
しかし当時は大量生産が主流となり、いわゆる『職人仕事』は軽視されていた時代、さらにオイルショックが追い討ちをかけます。
長年の修行で磨いた技術には自信のあった藍田さんも例外ではなく、家族からも『ご飯を食べられる仕事をして欲しい』と懇願されてしまいます。別の職を見つけ、仕事場を片付けるも、諦めきれず、最後の一反を持って東京中の呉服屋を回り、たった一軒だけ、藍田さんの小紋に理解を示してくれるお店がありました。そのお店とのご縁から藍田さんの小紋師としての新しい人生が始まり、現在に至ります。
藍田さんはご自信の制作活動はもちろん、江戸時代に使われていた『板引き杢』と言われる技法を開発や、『深山染め』と言われる技法の復元や、江戸小紋に使われる伊勢型紙の保護、弟子をとり、積極的に技術を伝承するなど、江戸小紋の発展にも尽力されています。
藍田正雄氏とお弟子さん
藍田さんは、江戸小紋の職人では珍しく、複数のお弟子さんがいます。
通常、江戸小紋の職人さんは、家族だけ、もしくはお手伝いさんだけ というところが多いのですが、私が訪問した8月も4人のお弟子さんがいました。今は独立している菊池宏美さんも、藍田正雄さんの元で修行をされた方です。
通常 職人さんは自分の技術が真似されるのを嫌がるため、弟子入りや取材を受けることはあまりありません。
しかし、藍田さんは、『後身を育てないと、江戸小紋の技術が廃れてしまう』という考えの下、お弟子さんを受け入れ、隠すことなく全ての技術を教えられています。
職人として一人前になるには長い年月がかかりますが、藍田さんの元で修行されている方は、上達のスピードが速く、素晴らしい作品を作り上げます。2016年の伝統工芸展では、後継者の藍田愛郎さんと麻薙詩乃さんが入選されていました。
藍田さんと話していると、お弟子さんの話にもなるのですが、一番笑顔になるのは、お弟子さんの事を話している時でした。
現在は、後継者の藍田愛郎さんに作品の制作を依頼しています。
藍田正雄作品についてのご相談・ご質問は045-731-6108へお電話、お問い合わせフォームよりお願いします。