大岡川の桜で染めた着物や帯、その制作の経緯をこちらのブログで一度御伝えしたいと思います。

大岡川の桜を使った桜染めの着物は、2018年4月22日のNHK 小さな旅で紹介されています。

大岡川は、横浜市磯子区の氷取沢から源を発し、横浜港に流れる川です。
特に当店のある弘明寺から桜木町の辺りまでは、川沿いに桜が植えられ、春先はとても綺麗な景色が見られます。

写真は、弘明寺商店街の観音橋からの景色ですが、毎年多くの観光客の方で賑わいます。

当店も創業以来、この川の近くで店舗を構え、毎年この桜を楽しみにしていました。
それと同時に、いつかこの桜を使って着物や帯を作りたいと思い続けていました。

桜の枝を使って着物や帯を作るには、草木染と言われる技法を用います。
植物の葉、花や枝を煮出して抽出した染料で糸を染めていくのですが、桜の場合、大量に揃えるとなると、枝や幹の部分が必要となります。

しかし、桜の枝を大量に確保するのは中々難しく、実現に至りませんでした。
それは、桜が河川や公園など、公共の場に生えていることが多く、勝手に伐採ができないこと、また、桜の伐採は難しく、下手に伐採してしまうと木が腐ってしまうことが理由です。
(*米沢など一部の地域では、雪の重みで折れた枝を集めて草木染をすることがありますが、横浜ではそこまで雪が降らないので、同じような事はできません)

まれに個人作家の方が桜染めの作品を作られていますが、お話を伺うと、ご自宅や知人宅の桜を木を使っているとのことで、一度にたくさんの作品を作る量を集めるのは非常に大変です。

ところが、2009年に、南区で『伐採木再利用プロジェクト』というものが始動しました。

これは川沿いの桜並木の中でも、寿命を迎えたり、倒木の可能性があったりする桜を伐採し、その桜を再利用できる方に贈呈するというものです。

こちらが実際に伐採した桜の木。

実際に伐採した桜の木

もちろん当店も応募し、無事に8キロもの桜の枝を頂く事ができました。
桜の枝を持った父

この枝の束を20個ほど頂きました。


8キロどころじゃない気もしますが、本人(私の父)も忘れてしまっているので、真相はわかりません笑

このままだと大きすぎるので、30cmぐらいの大きさに揃えて、職人さんに送ります。

この職人を探すのがかなり苦労しました。
染料を煮出し、糸を染め、その糸で着物や帯を織るという工程を、お一人でやっている方はほとんどいません。

色々と探した結果、新潟県の十日町市に工房を構える、岩田重信さん(三代目清次さん)にお願いする事が出来ました。

三代目清次さんに糸を染めてもらっています

ご自分の手で草木の収集から機織までを一貫して手がける職人さんです。

送った桜の枝で糸を染める度に連絡を頂き、色を確認しました。
染めた時は綺麗に見えても

時間が経つと薄くなってしまいます。
希望の色になるまで何度も何度も染めていきます。

染め上がった糸を、どの様に織っていくか打ち合わせをしていきます。

紬糸以外に、ウールや長襦袢など無理を言って色々なものを染めてもらいました。
こちらは長襦袢。

大岡川の桜で染めた長襦袢

ウールも染めてもらったので、ショールなどに使います。

大岡川の桜で染めた毛糸

こうして当店長年の夢であった、地元大岡川の桜で染めた着物や帯を制作する事ができました。
2009年以降も、様々な作品を作り続けています。

2018年には、また枝を頂き、桜染めの着物を作りたいと思っています。
ぜひ楽しみにしていてください。

 

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